開発チームのプロセス改善と若手育成の再設計支援

1. 支援概要

大手外資系生命保険会社において、システム開発チームの開発プロセス改善を支援しました。
本支援では、現場の「スキル不足」を単なる能力課題として捉えるのではなく、チーム内で起きている課題を構造化し、改善施策が継続的に回る状態をつくることを目的としました。

  • 支援期間:2ヶ月
  • 支援形態:マネージャーへの壁打ち・意思決定支援(伴走型)

2. ご相談背景(クライアント課題)

クライアントのマネージャーより、以下の課題感が共有されていました。

  • メンバーのスキル不足が課題として認識されている
  • 過去にも改善施策を複数実施してきたが、メンバークラスのスキルアップが進まない
  • チーム構成は、マネージャー+若手(入社2〜3年目)が中心で、中堅層が薄い
  • 次期中堅層の育成も必要だが、現場が回るだけで手一杯になっている

表面的には「育成が進まない」というテーマでしたが、実際には育成が機能しない状態が継続する構造的要因がある可能性が高い状況でした。


3. 課題の本質:マネージャーとメンバーの“ギャップ”が見えない状態

調査を進める中で、チーム内のコミュニケーションが、マネージャーからの一方通行になっている状態であることが分かりました。

その結果として、

  • マネージャー側は「指示や期待値を伝えているつもり」
  • メンバー側は「詰まっているが相談できず、自己解決しようとして停滞する」
  • 互いに現状認識が一致せず、改善施策が刺さらない

といった“ギャップ”が発生していました。

つまり、スキル不足以前に、現状を正確に把握し、改善につなげるための土台が不足していることが根本課題でした。


4. 弊社のアプローチ:成功循環モデルで“マイナス循環”を仮説化

弊社では、スキルアップが進まない理由について、成功循環モデルにおけるマイナスの循環が起きているという仮説を立てました。

その上でメンバーへのヒアリングを実施し、マネージャー側では把握できていなかった以下の情報を抽出しました。

  • どの工程で詰まりやすいか
  • 相談が発生しない(または遅れる)背景
  • “できない状態”が継続する心理的・構造的要因
  • 過去施策で不足していた視点(期待値、運用、フォローの仕組み等)

結果として、仮説が高い精度で該当していることを確認でき、課題を「個人の問題」ではなく「チームの構造」として整理できる状態をつくりました。


5. 支援内容:成功循環モデルに紐づく「10個の改善施策」を提案

可視化した課題構造をもとに、弊社からは合計10個の改善施策を提案しました。
特徴は、施策を単発で終わらせず、成功循環モデルの各プロセスに紐づけて整理した点です。

これにより、

  • どの施策が「関係の質」を改善するのか
  • どの施策が「思考の質」「行動の質」を押し上げるのか
  • どの施策が「結果の質」に直結するのか

が明確になり、改善活動の優先順位が合意形成しやすい状態になりました。

さらに、過去の取り組みで「実施はしたが定着しなかった」要因を整理し、不足していた視点を補完したうえで再設計を行いました。


6. 現在の状況

提案した改善ポイントをもとに、現在クライアント側で、施策の見直しと再実施が進んでいます。
改善活動が“やりっぱなし”にならず、チームとして「次に何をすべきか」が明確な状態で前進できるよう、支援を行いました。


7. 補足:成功循環モデルとは

成功循環モデルとは、組織やチームの成果が、次の4つの要素が循環することで生まれるという考え方です。

  • 関係の質(心理的安全性、信頼、対話のしやすさ)
  • 思考の質(課題の捉え方、仮説思考、改善視点の解像度)
  • 行動の質(実行量、連携、改善の継続、振り返りの習慣)
  • 結果の質(成果、成長、納期遵守、品質向上など)

このモデルでは、成果(結果の質)を上げるためには、行動だけを変えるのではなく、まず「関係の質」を整えることが起点になるとされています。
一方で、関係性が悪化すると、思考が萎縮し、行動が停滞し、成果が出ず、さらに関係性が悪化する…というマイナスの循環に陥ります。

本事例では、チーム内の状態をこの枠組みで整理し、成功循環モデルがプラスの循環に転換するための改善施策を設計しました。


8. 追加提案:成功循環モデルを“継続的に回す”AIエージェント活用

成功循環モデルの観点では、成果(結果の質)を継続的に高めるためには、行動だけを増やすのではなく、まず関係の質を起点に、思考の質・行動の質を連鎖的に高めていくことが重要です。

今回弊社では、改善施策の再設計に加え、改善活動を「一過性で終わらせない仕組み」として、マネージャーの視点・思考を学習したAIエージェントの活用も追加提案として検討しました。

開発現場では、若手メンバーほど「相談したいが聞きづらい」「何が分からないか分からない」といった状態に陥りやすく、結果として課題が顕在化しないまま、成長停滞や手戻りにつながるケースが少なくありません。
そこで弊社では、メンバーが気軽に壁打ちできる“仮想マネージャー”として、AIエージェントの試行を進めています。

本AIエージェントは、成功循環モデルの各プロセスに対して、次のような形で“循環を回す仕組み”として機能します。

  • 関係の質:マネージャーに直接聞きづらい状況でも相談のハードルを下げ、心理的安全性と対話量を補完
  • 思考の質:問いかけや観点提示により、メンバーが自分の課題を構造化し、新たな視点に気づく支援
  • 行動の質:相談→整理→次アクションの明確化を通じて、改善・学習の実行頻度を高める
  • 結果の質:スキル習得の停滞や手戻りを抑制し、チームの生産性・品質向上を後押し

また本AIエージェントは、正解を示唆するものではなく「気づきを与える役割」に留める設計としている点が特徴です。
これにより、誤った内容をそのまま学習してしまうリスクを抑えつつ、メンバーの自走力を高め、同時にマネージャーの一次対応負荷の軽減にもつなげることを狙います。


9. 本事例のポイント(同様の課題を抱える企業様へ)

本案件では、スキル不足を「能力の問題」として扱うのではなく、育成が回らなくなる構造(コミュニケーション/関係性/施策設計)を可視化したことが成果につながりました。

特に以下のような状況では、施策を増やす前に、まず課題の構造を整理することが改善の第一歩になります。

  • 若手中心で中堅層が薄い
  • マネージャーが努力しているのに育たない
  • 改善施策を打っても定着しない

弊社では、現場ヒアリングと構造化を通じて、実行可能で優先順位の明確な改善ロードマップへ落とし込み、改善が回る状態づくりを支援します。


お問い合わせ

「若手が育たない」「改善施策が定着しない」「マネージャーの負荷が限界」といった課題をお持ちの場合、現状整理から改善ロードマップ策定、AI活用の試行まで伴走可能です。
ご相談内容に応じて、貴社の状況に合わせた進め方をご提案いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

  • 開発プロセス改善/育成設計の壁打ち支援
  • 成功循環モデルに基づく改善施策の再設計
  • マネージャー思考を活用したAIエージェントの試行支援(PoC)

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