中小企業や小規模事業者において、専門的な分野に精通した人材は、慢性的に不足しており、人的リソースについては大企業に比べて限られています。
しかし、昨今の事業環境を取り巻く環境の変化は以前にもまして早く、専門的な知識や経験を活かして常に改善を行っていく必要に迫られているのが現状ではないでしょうか。
また、特に規模の小さな企業であるほど人手不足に対する対応が経営者に集中し、業務負荷の軽減が課題となっています。
【人手不足への対応手段】
※三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「小規模事業者等の事業活動に関する調査」(2017年12月)
2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要より抜粋
コンテンツ
経営者でないと対応できないことですか
経営者が日常的に発生する業務の労働時間を増やすことは、あまり得策であるとは言えません。
人手不足になっている業務内容がそもそも経営者が行う内容であれば、経営者が対応するのが当然ですが、人がいないからという理由で、本来経営者がするべきでない業務まで経営者が対応することには、将来の事業を成長させていく戦略や方針を考えることが本来の使命があることを踏まえると問題があると考えられます。
経営者は、事業を発展させるために次の対策を考えていく必要があるにも関わらず、日常のルーティンワークに時間を割いている場合ではありません。
しかし、現実として経営者以外の社員(パート・アルバイトを含む)では、対応できないのでやむを得ず経営者が対応しているような状況になってはいないでしょうか。
本来であれば、経営者と業務担当者(パート・アルバイトを含む)の間に担当社員が入り、業務が上手く回るように調整することが理想です。
そうすると、社員を増やさないといけなくなってしまうので、経営資源が限られている中小企業・小規模事業者では、なかなか実施できないのが現状ではないでしょうか。
【参考】
中小企業の人材の採用で失敗しない採用のコツを紹介していますので、参照される場合は次のリンクをクリックしてください。
パート・アルバイトを活用している理由を思い出してください
あなたの会社・組織では、事業が軌道に乗って人手が足りなくなったときに、パート・アルバイトを活用していないでしょうか。なぜ、正規の社員でなくパート・アルバイトを選んだのかもう一度思い出してください。
理由はいくつかあると思いますが、当該業務には、正社員がやるまでもなく長期的に雇用するコストをかけられないという理由があったと思います。
また、仕事が一時的で必要な時に必要なだけ働いて欲しいから、という理由からではないでしょうか。
それならば、現在経営者に集中している業務や人手不足が原因で手を付けられていない仕事があるなら、同じように必要な分だけ協力してくれる人に協力してもらえればよいのです。
現在、外部の人材を活用するサービスは、内容も形態も多種多様であり、さまざまなサポートを受けることができます。
その仕事が得意な専門家のスキルを利用すれば、正規社員を雇用するより少ないコストで経営者の負担を軽減し、本来経営者が注力すべき仕事に集中することが可能となります。
経営者が本来の仕事に注力できないことによる機会損失に比べたら、一時的に専門家を活用するコストはわずかな費用ではないでしょうか。
外部の専門家とどうやって接触(マッチング)すればよいのか?
パート・アルバイトを利用する感覚で外部の専門家を利用できるかというと少し注意する点があります。
まず、パート・アルバイトより高度な専門的なスキルや知識を求めることになるため、ブランドが弱い中小企業や小規模事業者が独力で探す(募集する)のは困難であると思います。
また、仮に専門家が見つかったとしても経営者が対応しなければならないような仕事は、パート・アルバイトの方に頼む仕事のように定型的な仕事ではなく、非定型業務であることが多いため、いざ専門家に仕事をお願いするとしてもどのように活用すれば、上手く生産性の向上につなげていけるのか分からない部分もあるのではないでしょうか。
外部の専門家を活用する上で多くの方が疑問に思われていることとして、主に次の2点があります。
疑問1.専門家の探し方が分からない
一概に専門家を探すといっても様々なサービスがある状況では、どれを選んでよいのか分からないのではないでしょうか。
解決したい課題などが明確であれば特定の専門家と契約してもよいと思いますが、どうやって専門家を選んでよいか分からない場合は、不安もあると思いますので、まずは、無料で相談できる公的機関を利用されてみるのが良いかもしれません。
なお、専門家といえどもビジネスで行っていますので、専門家の利益だけを考えて対処されないように本当に自社のことを考えて対応していただけるかよく見極める必要があります。
残念ながら世の中には、適当に使えない成果物を作成して手数料(フィー)を請求する専門家や単に他者を紹介するだけなど付加価値が低い(活用するメリットがほとんどない)専門家もいますので、しっかりと見極める必要があります。
専門家を探す方法として、いくつかの方法をご紹介します。
よろず支援拠点
よろず支援拠点とは、国が全国に設置した相談支援機関です。何度でも無料で相談できることが特徴です。
各士業を中心とするコーディネーターが事業に関する様々な相談をワンストップで対応してくれることが特徴となっています。
よろず支援拠点では、課題解決に向けて相談内容に応じた適切な支援機関の紹介や課題に対応した支援機関の相互連携をコーディネートしていただけますので、どのような専門家に相談すればよいか迷っている場合にもおすすめです。
また、様々な業種や相談内容に対応している実績がありますのでどの専門家に相談してよいか分からないような場合でも安心して相談できると思います。
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【平成28年度 業種別内訳】
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【平成28年度 相談内容内訳】
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【平成28年度 満足度調査(全国平均)】
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※グラフは、よろず支援拠点のWebサイトから抜粋
上記のデータを見ると、ITに関する相談が読み取れないのは、気になるところです。売り上げ拡大、経営改善・事業再生に関する手段としてITが含まれているのであれば良いのですが、もしかすると、よろず支援拠点は、ITに関する相談は、少し苦手な分野なのかもしれません。
よろず支援拠点の詳細は、次のリンクをクリックしてください。(外部のWebサイトを表示します。)
よろず支援拠点
近隣のITベンダやITコンサルタント
ITに関しては、各士業であっても実際に実務を経験した方でないと対応が難しい分野です。特に、ITを専門とする士業はありませんから、民間のITベンダやITコンサルタントを頼るのが解決への近道となります。
(IT分野には、情報処理技術者の国家資格がありますが、IT技術者向けの資格であるため、IT導入のためのコンサルティングは専門外です。)
統計を見るとITに関する相談相手は、地元のITメーカや販売会社に相談する方が多いようです。
しかし、私がお勧めするのは、地元のITメーカや販売会社でも公認会計士や税理士でもありません。
第三者の立場で、業務面とシステム面の両面を考えられるコンサルタントに相談するのがベストです。
万が一、周りに相談者がおらず、だれに相談して良いか分からない場合は、一度中小企業診断士を頼っていただくことをお勧めします。
中小企業診断士は、上記のよろず支援拠点等にも在籍しています。もちろん、弊社にも中小企業診断士が在籍しております。
※三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「人手不足対応に向けた生産性向上の取り組みに関する調査(2017年12月)
2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要より抜粋
※<凡例>
トップ層:IT導入により期待した効果が得られている層
ミドル層:IT導入によりある程度の効果が得られている層
ボトム層:IT導入の効果が得られていない層又はITを導入していない層
相談する相手として地元のITメーカや販売店に相談するケースが1番多くなっていますが、何度も言いますが私はベストではないと思っています。
よく考えてみてください。
ITメーカや販売店は、自社の製品やサービスを売って利益を上げています。普通に考えたら、自社の製品やサービスを購入して欲しいと考えると思いませんか。たとえ、他にもっと自社の業務に適合する製品やサービスがあっても自社の製品を勧めるでしょう。
また、2番目に多い公認会計士・税理士は、会計分野のシステムには詳しいでしょうが、他の業務システムの専門家であるとは、到底思えないです。
(中には、システムに詳しい公認会計士・税理士がいるかもしれませんが非常にまれだと思います。)
また、システムは、導入して終わりではなく、業務で利用してはじめて効果を発揮します。そのため、業務で使いやすいシステムを選択する必要がありますので業務的な側面も考えて導入をしなければならないのです。
システム面と業務面の両面をカバーできるかどうかは、Webサイトなどのサービス内容や問合せをしてみる方法で確認するしかありません。
単に販売するだけのITメーカや販売店に依頼した場合、業務とシステムが適合するかの判断は、自社で行うことになる可能性があります。
参考までに弊社のコンサルタントの場合は、システム導入の案件を担当した経験があります。単に導入しただけでなく、業務側の要望、システム提供側の都合の両方を勘案して第三者の立場で導入した経験がありますのでITの導入に関するご相談は、弊社にお任せください。
同業者や顧問税理士等からの紹介
同じ業種の方であれば、同じような悩みを持っている可能性がありますので、知り合いの経営者の方に相談してみるのも一つの方法です。
また、経理関係を税理士に依頼しているケースが多いと思いますが、税理士に専門家を紹介してくれるように相談するのも一つの方法です。
士業は、他の士業とのネットワークを持っていることが多いため、求めている専門家を紹介していただける可能性があります。
特に特定の専門家がいない場合は、ひとまず「中小企業診断士」をご紹介してもらうのがお勧めです。それぞれの経歴によって専門分野が異なるものの「専門分野+経営」のスキルがある中小企業診断士であれば、問題に対応できる可能性があります。
行政等が行っている専門家派遣
区など行政が行っている専門家派遣サービスを利用する方法もあります。
こちらも基本的には、中小企業診断士や税理士など士業をはじめとする専門家で構成されており、専門家によるサポートを受けることが可能です。
ただし、実務経験的に専門家であるか疑問があるケースも見受けられます。
実際、行政書士資格取得者が相談に行ったら、自分の方が詳しかったなんて話も聞いたことがあります。
事前に担当の経歴等が確認できないこともあり、当たり外れが大きいように思えますので、参考までにご利用されてもよいかもしれません。
人材紹介サービス
コンサルタントや顧問を派遣するサービスを行っている業者を活用する方法もありますが、中小企業・小規模事業者にはお勧めできません。
まず、費用が割高であることが挙げられます。コンサルタント本人への報酬以外に運営会社の利益分があるため仕方ないものではありますが高いです。
また、サービスによるのでしょうが、どのようなコンサルタントが派遣されてくるか分からないのもリスクと考えます。
会社によっては、低コストで過去の実績をアピールしているサービスもありますが、実力と報酬は基本比例しますので、わざわざ低いコストで引き受けるコンサルタントには、何か理由があると考えてもよいかもしれません。
疑問2.専門家の活用方法が分からない
実際に専門家を見つけられたとして、どのようにその専門家を活用すれば、事業の生産性向上につなげられるか分からないというお話も、よくお聞きします。
専門家が必要な状況として、大きくは2つのケースがあると思います。
1つ目のケースとして、1回限りの対応で解決し、今後の業務で対応が発生しない場合です。
2つ目のケースは、対応後も業務を行う際に影響があり、継続的に対処する必要がある場合です。
1.1回限りの対処で解決できるケース
専門家のサポートが必要だが、1回限りの対応で完結するケースです。結論からいうとこちらは、あまり問題ではありません。
依頼する内容のほとんどが、その専門家の専門分野(独占業務など)であることが多く、通常であれば問題なく対処していただけてそれ以降に対処が不要だからです。
例えば、会社設立の登記申請を司法書士に依頼したり、各種認可申請の書類を行政書士に依頼したり、確定申告を税理士に依頼するような場合です。
2.継続的に対処が必要なケース
専門家を活用する際に気をつけなければいけないケースは、一度だけの対処だけで終わらず、対処の内容がその後の業務に関わる場合です。
例えば、次のようなケースです。
- 専門家に事業戦略を考えてもらったが、その後の実行段階でどうすればよいか分からない。
- 社内の人事制度を策定してもらったものの、上手く機能せずに困っている。
- 業務の効率化策を作成したが、現場に上手く浸透しなかった。
- システムを導入したが、現場で上手く使いこなせていない。
なぜ、このようなケースが発生するかと言いますと、当該タスクを完了させるために、専門家が担当する部分と社内の担当者が担当する部分が上手く結合していないことに問題があることが多いです。
コンサルタントなど、戦略は立てるが実行の責任は取らないと言われることがありますが、それは、実行できるようにサポートするよう専門家を活用していないか、専門家のサポートがなくても実行できるように専門家を使っていなかったことに原因があることが多いです。
専門家を活用する上でポイントとなるのは、「継続可能性」です。
継続可能性とは、簡単に言うと専門家が行った内容をいかにうまく社内の担当者が引き継げるかということです。
専門家なので依頼した事項は、一見そつなくこなしてくれますが、実際に担当する社員が実行することが難しい内容になっている場合も見受けられます。それでは、せっかく専門家を活用しても効果がほとんどありません。
専門家を活用するのであれば、どこまで対応・フォローしてもらいたいのか明確に提示することで専門家が行った結果を活かすことができるでしょう。
専門家に依頼する際の流れについて、例を次のとおりご紹介します
【外部専門家を活用する際の手順例】
- 解決したい問題・課題を明確に整理します。
資料として整理すると後ほど専門家に伝える際に認識祖語の発生を防ぐことができます。
また、「単に売り上げを上げたい」など抽象的な依頼だけでは、専門家といえども対処に困ります。今まで取り組んできて上手くいかなかった施策や今後どうしていきたいと考えているかなどがあると専門家としてもアドバイスがしやすくなります。
そもそも、社内で解決すべき問題・課題が整理できない場合に専門家を活用する方法もあります。
この場合、士業であれば、中小企業診断士に相談することをお勧めします。 - 社内で対応できることと、できないことを整理します。
解決したいことのうち、どの程度社内で対応できるか洗い出します。
すべて、専門家に丸投げすることも可能ですが、外部の専門家の単価は決して安くありませんので、社内で対応できるものがあれば、社内で対応することも検討すべきです。また、社内で対応する場合は、どのような人に任せたいのか明確にします。
ベテラン社員に対応させたいのかパート・アルバイトに任せたいにのでは、後々の対応が変わってきます。 - 項番1、項番2で整理した内容を元に専門家を探します。
探し方が分からない場合は、冒頭に紹介した支援機関等を活用して専門家を探します。探す際のポイントとしては、過去に同様の経験があるだけで選ぶのではなく、結果に繋がったかどうかなども確認するべきでしょう。
もちろん、素晴らしい結果を多数出されている専門家にお願いするのが理想ですが、実績に比例してコストもかかりますし、探すのも大変です。
何より、最後までやり遂げてくれる責任感があるかどうかが大切です。自ら探す場合は、過去の実績を確認するとともに万が一トラブルが発生しても最後まで信頼できるか確認しましょう。
- 専門家に対して依頼する。
適当な専門家が見つかったからといって、いきなり契約してはいけません。
こちらが依頼したいことを伝えた上で、必ずどのような支援をしてもらえるのか確認しましょう。可能であれば、提案書を出してもらうとよいでしょう。
希望する支援が受けられるようであれば、項番2で整理した自社で対応できないことを専門家に依頼しましょう。
この際、その事項だけでなく、その後の運用も考慮して、後々活かせるように考慮してもらうことを忘れないでください。なお、システム導入など専門的な内容の場合は、ITメーカや販売店の間にITの専門家に入ってもらうことも検討してください。
(通常、大手企業ですと専門の情報システム部門があり、その担当者がITメーカや販売店の対応をします。)
情報や知識的にITメーカ・販売店より弱い立場であればなおさらです。
ITメーカや販売店の都合だけでシステムを導入すると業務的に使いづらいシステムになったり、機能過剰で過剰投資となる可能性があります。
まとめ
外部の専門家を上手く活用することができれば、たとえ経営資源が限られていたとしても、わずかな費用でそれ以上の結果を生み出すことが可能となります。
特に自社で試行錯誤して時間をかけるのもノウハウを蓄積するためには必要ですが、時間的な費用対効果を考えて外部の専門家の知見を上手く活用し効率的に事業を推進していくことをお勧めします。